間違った外国語学習はやめよう。必要なのは”Comprehensible Input”です

Languages

私たち日本人は英語を学生時代からずっと勉強しています。しかし英語を話せると言える人はどのくらいいるでしょうか?それほど多くないと思います。

本記事では、私たちが受験勉強でやってきた英語学習法とは全く異なる言語の学習方法について説明していきたいと思います。またこの方法は英語に限らず、外国語学習全般に使うことができるので、韓国語を勉強したい方やフランス語を勉強したい方なども見ることをお勧めします。

 電車に乗ると、ふと目に飛び込んでくる英語関連の広告。「3ヶ月でペラペラに!」「ネイティブのような発音を目指そう!」といったキャッチコピーが並び、英会話教室やオンライン英語学習サービスの宣伝が目立ちます。それだけ多くの人が英語の必要性を感じ、学ぶ努力をしていることの証拠でしょう。しかし、同時にこうした広告が溢れていること自体が、日本人の多くが英語を話せるようになることに苦戦している現状を物語っているようにも思えます。

 考えてみてください。私たちは小学校から中学校、高校、さらに大学まで、10年以上もの時間をかけて英語を勉強しています。文法の授業を受け、単語を覚え、模試や受験で英語を試される。しかし、その長い学習期間にもかかわらず、いざ海外旅行や仕事の場で英語を話そうとすると言葉が出てこない。このギャップ、一体なぜ生まれるのでしょうか?

 もしかすると、それは私たちが学んできた英語学習の方法そのものに問題があるからかもしれません。単語や文法を暗記し、テストで正しい答えを書く力は身につけても、それを「実際に使う力」に結びつける学習法にはなっていないのです。「読めるけど話せない」「書けるけど聞き取れない」。これは日本の英語教育を受けた多くの人が抱える共通の悩みではないでしょうか?

 そもそも、言語を学ぶとはどういうことでしょうか?幼い頃、私たちは日本語をどうやって身につけたでしょう?母親や周囲の人々が話す言葉を聞き、真似し、失敗しながらも自然に言葉を覚えていきました。それは、言語を「使える形」で身につける理想的なプロセスでした。対照的に、日本の英語教育では、言語そのものを「ルールや知識」として教えることに重きが置かれてきました。その結果、「使う力」としての英語が育ちにくくなっているのです。

 では、どうすればこの状況を打開できるのでしょうか?実は、世界中で多くの人々が成功している新しい学習法があります。それが「Comprehensible Input(理解可能な入力)」というアプローチです。この方法は、私たちが日本語を学んだように、自然な形で英語を身につけることを目指します。そして、実際に話せる・聞ける力を養うのです。

 次に、このComprehensible Inputとは何なのか、そしてなぜ効果的なのかについて詳しく説明していきます。英語を「使える力」として身につけたいと考えている皆さんにとって、新たな学びの扉を開くきっかけとなるでしょう。

 スティーブン・クラッシェンという言語学者がいます。彼は、外国語学習を効率的に行うためにどのような方法がいいのかということを熱心に研究しました。そして彼の出した結論は”comprehensible input”と呼ばれるものでした。それではcomprehensible inputがどのようなものなのかを詳しくみていきましょう。

Comprehensible Inputとは、外国語学習において、学習者が少しの努力で理解できるレベルの言語を聞いたり読んだりすることを指します。第二言語習得理論で知られるスティーブン・クラッシェン博士が提唱したこの概念は、言語学習における革命的なアプローチとして注目されています。その核心は、「学習者が完全には理解できないが、大部分は理解できる言語に触れること」であり、これが言語習得の自然なプロセスを促進すると言われています。

 たとえば、子供が母語を学ぶ過程を思い浮かべてみてください。赤ちゃんが最初から文法を学んだり、単語を暗記したりすることはありません。それでも、親や周囲の人々が話す言葉を聞き続ける中で、意味を徐々に理解し、言葉を覚えていきます。これが、まさにComprehensible Inputが目指す学習プロセスなのです。大人の外国語学習者にとっても、この方法は非常に効果的で、実際の文脈の中で言語を「生きた形」で学べる点が特徴です。

 Comprehensible Inputが効果的な理由は、学習者が自然な形で言語のパターンや構造を身につけられることにあります。文法や単語を個別に学ぶのではなく、言語を「意味のある全体」として受け取るため、実際の会話や文章でそのまま使える知識として定着します。さらに、理解可能な範囲の言語を扱うため、心理的な負担が軽減され、学習を楽しむ余裕が生まれる点も魅力です。学び手は「わからないことがあるのは当然だ」という気持ちで学習を続けられるため、挫折しにくくなるのです。

 Comprehensible Inputを実践するには、自分の現在の言語レベルに少しだけ挑戦を加えた教材やリソースを選ぶことが重要です。たとえば、初心者であれば、子供向けの絵本やアニメを活用し、文脈や絵を手がかりに意味を推測するのが効果的です。中級者には、簡易版ニュースや英語学習者向けのポッドキャストが適しています。一方、上級者であれば、TED Talksや映画など、より複雑な内容に触れることでさらなる成長が期待できます。重要なのは、全体の80~90%は理解できる素材を選ぶことです。これは、知らない単語や表現が少し含まれていることで、学習意欲を刺激しつつ、推測力を鍛えられるからです。

 また、学習は継続がカギとなります。たとえば、通勤時間にポッドキャストを聞いたり、寝る前に英語の簡単な記事を読むなど、日常生活に無理なく取り入れることが成功のポイントです。さらに、自分の興味や関心に合った素材を選ぶことも重要です。好きなテーマであれば学習そのものが楽しくなり、継続のモチベーションを維持しやすくなります。

 従来の日本の英語教育では、文法や単語の暗記が中心であり、「読む・書く」能力は身につく一方で、「聞く・話す」能力が育ちにくいという課題がありました。一方でComprehensible Inputは、言語を実際のコミュニケーションの中で吸収するため、リスニングやスピーキング能力の向上に直結します。また、この方法では、文法を「理屈で覚える」のではなく、「自然に使える形で身につける」ことが可能です。

 「外国語学習は難しい」と感じる人が多い中、Comprehensible Inputは新しい可能性を切り開く学習法です。文法の勉強や単語の暗記だけでは解決できなかった課題を補い、言語を「使えるスキル」として習得する手助けをしてくれます。学びの最初の一歩は小さくても構いません。まずは自分に合ったレベルの動画や記事に触れるところから始めてみましょう。それが、あなたの言語習得の新たな扉を開くきっかけになるはずです。

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